もっとも彼は決して社交的な人間ではなかった。



彼は学校では僕以外の誰とも仲良くはならなかった。



あれほど頭が切れて座談の才のある男がどうしてその能力をもっと広い世界に向けず我我三人だけの小世界に集中させることで満足していたのか僕には理解できなかった。



そしてどうして彼が僕を選んで友だちにしたのか、その理由もわからなかった。僕は一人で本を読んだり音楽を聴いたりするのが好きなどちらかというと平凡な目立たない人間で、キズキがわざわざ注目して話しかけてくるような他人に抜きんでた何かを持っているわけではなかったからだ。それでも我々はすぐに気があって仲良くなった。彼の父親は歯科医で、腕の良さと料金の高さで知られていた。


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