その寮は都内の見晴しの良い高台にあった。
敷地は広く、まわりを高いコンクリートの塀に囲まれていた。
門をくぐると正面には巨大なけやきの木がそびえ立っている。
樹齢は少くとも百五十年ということだった。
根もとに立って上を見あげると空はその緑の葉にすっぽりと覆い隠されてしまう。
コンクリートの舗道はそのけやきの巨木を迂回するように曲り、それから再び長い直線となって中庭を横切っている。
中庭の両側には鉄筋コンクリート三階建ての棟がふたつ、平行に並んでいる。
窓の沢山ついた大きな建物で、アパートを改造した刑務所かあるいは刑務所を改造したアパートみたいな印象を見るものに与える。
しかし決して不潔ではないし、暗い印象もない。開け放しになった窓からはラジオの音が聴こえる。
窓のカーテンはどの部屋も同じクリーム色、日焼けがいちばん目立たない色だ。
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