あるところに、野原に放し飼いにされ、のんびりと暮らしている子牛がいました。



そのすぐ近くに、土まみれになって畑を耕している老牛がいます。



子牛は、その老牛の大変な様子を見るたびに、自分がのんびり暮らせる境遇でよかったと思っていました。


 
 ところが、秋の村祭りの日、ずっと辛い仕事に耐えてきた老牛が、縄を解かれて自由の身になれたのです。



いっぽう、のんびり暮らしてきた子牛は、祭りの生贄(いけにえ)になるため連れていかれました。




これを見た老牛は、心の中でこう思いました。


 
「あの子牛が仕事もさせられずに大事に育てられたのは、生贄として神に捧げられるためだったからだ。



自分はずっと働かされて大変だったが、ついに解放されて自由になることができた。本当にありがたいことだ」


 
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