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彼はいつも白いシャツと黒いズボンと紺のセーターという格好だった。

頭は丸刈りで背が高く、頬骨がはっていた。学校に行くときはいつも学生服を着た。

靴も鞄もまっ黒だった。

見るからに右翼学生という格好だったし、だからこそまわりの連中も突撃隊と呼んでいたわけだが本当のことを言えば彼は政治に対しては百パーセント無関心だった。

洋服を選ぶのが面倒なのでいつもそんな格好をしているだけの話だった。

彼が関心を抱くのは海岸線の変化とか新しい鉄道トンネルの完成とか、そういった種類の出来事に限られていた。

そういうことについて話しだすと、彼はどもったりつっかえたりしながら一時間でも二時間でも、こちらが逃げだすか眠ってしまうかするまでしゃべりつづけていた。



  毎朝六時に「君が代」を目覚し時計がわりにして彼は起床した。

あのこれみよがしの仰々しい国旗掲揚式もまるっきり役に立たないというわけではないのだ。

そして服を着て洗面所に行って顔を洗う。

顔を洗うのにすごく長い時間がかかる。

歯を一本一本取り外して洗っているんじゃないかという気がするくらいだ。

部屋に戻ってくるとパンパンと音を立ってタァ‰のしわをきちんとのばしてスチームの上にかけて乾かし、歯ブラシと石鹸を棚に戻す。

それからラジオをつけてラジオ体操を始める。


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